十万円以上をバイト仲間に貸しましたが
相手がどんな人でも、貸したお金は返ってくると思うな。これはもう何年も前に親から言われた教訓です。
当時はまだ子供で、お金の貸し借りなど無関係の世界にいましたから、ただ漠然と記憶していただけなのですが、いざ大人になってみると、お金に対してルーズな人って、こんなにもいるのかと思うほどいるものです。
もう十年ほど前、当時バイトをしていたパン屋の惣菜担当をしていた、自称60代の男性は未だに忘れられません。
彼は毎日電車で通っていたので、車通勤していた私は、バイト帰りに駅まで、送ってあげたりしました。
仲良くなると、その頻度は増え、「毎日じゃ悪いから」と彼がガソリン代を払ってくれたりもしました。
彼は陽気な性格で、人当たりも良く、面白いことを言っては皆を笑わせるので、バイト仲間や、同じ惣菜担当のおばさんたちからも慕われていました。だから、その当時は彼のことを疑う人は誰もいなかったと思います。
彼は頻繁に、皆からお金を借りるように
しかし、一年位経った頃から、彼は頻繁に、皆からお金を借りるようになりました。
「電車の中で財布を落とした」これが彼の手口です。
また?と呆れてはいましたが、「帰りの電車賃もない」とぼやく彼を見て、私も幾度となく貸してあげました。
「ありがとう。給料日に必ず返すから」
その返事通り、初めのうちは返してくれましたが、だんだんとその回数は減っていきました。
彼に貸したお金は十万を超えて
気付けば、彼に貸したお金は十万を超えていました。
当時の私の、一カ月のバイト代が十二、三万でしたから、私にとっては大金でした。
その後、店は閉店し、彼は身体の具合が悪くなったから、東京で看護師をしている娘の病院に入院すると電話で言い残したまま、姿を消しました。
彼は私の携帯番号を知っているし、連絡をしようと思えばいつでも出来るだろうと思います。
でも、連絡が来たことは一度もありません。
後に判ったことですが、彼にお金を貸していたのは私だけでなく、店長や、惣菜担当のおばさんにも多額のお金を借りていたそうです。
貸したお金は返ってこない。いつか親に言われてはいましたが、やはりその通りでした。
損はしましたが、社会勉強にはなったと思います。